山を登ったらバーガー

突然、山に行くことになりました。

去年と比べ2倍の大きさになった寮の部屋で、夜勉強していたら

「週末、ハイキングにいかない?」とルームメイトに誘われました。どうやら運転してくれる友人の車に、空席があるかもしれないとのこと。まだ予定はわからないけど、本当に行ってもいいのか確認してくれないかなと頼むと、

数日後ルームメイトから連絡が。

“Hey Kia, you’re going Hiking too 😃

confirmed; no drop out last minute… We’ll have fun. You’ll help me if I die.”

よぉ貴亜、君もハイキングに行くよ 確定。直前のキャンセルは不可。一緒に楽しむよ。私が死んだら、助けるんだね

予定は未定と伝えていたはずが、私の決定権はどこか地平線の果てに飛んでいってしまったようです。ついでに死んでから助けるのだとちょっと遅いような気がします。


登山日、早朝。

登山食として果物をバッグに詰め込み、いざ出陣。

待ち合わせの車の前で、8人いる内、奇遇にも同名のJoshが3人参加していたのでそれぞれ番号を決めることになりました。Josh 1 、 Josh 2、 Josh 3 よろしく。遅れてくるという数名を、駐車場で待つことに。

ルームメイトは突然バナナを取り出し、 Josh 達に「食べる?」と聞きました。猿でもしないような挨拶に戸惑うJosh 達。断られた彼女は「あ、そう」といそいそと皮を剥き始め、まだ山に到着してもいないのに、登山食を駐車場で平らげてしまいました。

そうして準備が整ったところで、車に乗り、3時間で到着。


なんやかんやで頂上に着き、いざ下山。

山を降りる際、後に5歳のオーゥエン君と判明する少年に追い抜かされました。彼は傾斜を、滑り台のようにお尻をついてすすーっと降りて行きました。この方法だと効率が良いし早いとのこと。誰にも聞かれていないのに、大声で説明してくれました。

なぜそれほど急いでいるのか疑問に思っていると、

「家で母が待っていて、18:00の食事に間に合わなくてはならない」とのこと。

こちらの情報も、誰にも聞かれていないのに、大声で説明してくれました。

すると背後から「オーウェン」と鋭い声が。祖母と思われる女性が、足が悪いのかゆっくりと遠くから降りてきます。
「オーウェン、あなたがいくら急いでも、私が車に着かないと家には帰れないよ。」と乗用車の鍵をじゃらじゃら見せつけます。オーウエン君は現実を突きつけられてしまいました。

立ち止まり、後ろを確認するオーウェン君。悔しそうに唇を噛み締めています。夕飯に間に合いたいが、祖母の歩行速度が遅い。

「僕の仲間が後ろにいるから、僕は待つのさ・・。」

とやっぱり誰にも聞かれていないのに、大声で説明してくれました。

使命感を持った少年、オーウェン君。

時刻は残酷にも18:15


山を降り終えたら、ハンバーガーを食べに行きました。

健康な事をすれば、不健康な行為でバランスを取るというのが米国流です。
バーガー屋は健康意識が高く、通常のバーガー以外にも健康そうな品が揃っていました。

ルームメイトが注文したのは

ウェジィバーガーとイチゴのミルクシェイク。
ウェジイバーガーとはなんなのでしょう。解説文を読むと、野菜が多そうな一品です。しかし予想は少し外れました。

出されたお皿の上にはなぜかアルミに巻かれていて、彼女は首を傾げています。野菜が多いどころか、通常パンであるはずの部分が、レタスになっています。つまりは6cm ほどの分厚いレタスの層に、ちょこっと肉が挟まっているのです。

「バーガー、パンで挟まれてると思った。でも、パンが無いね。」と

彼女は本気で悲しそうな表情をしてポツリと呟きました。

ウェジィバーガーの横には付け合わせのサラダが付いているので、お皿の上は、目が良くなるのではないかと言うほど緑です。

3番目のJoshがおどけていいました。 

『店員に訴えな、

ワタシはカンボジアから来た。バーガーにパンがないってどういうことだ。

アメリカ人よ、パンをヨコセ。」ってな。』

さすがにこれには憤るだろうと、恐る恐る隣を見ると、彼女は爆笑。

テーブルの上に置かれたミルクシェイクが揺れています。

Josh 2が、パンを追加注文できるか聞いてみようか、と尋ねたら首を振るルームメイト。心なしか手に持っているレタスも、しょんぼりしています。

するとJosh 3が、再び口を開きました。

「アメリカではな、パンが欲しけりゃな、」

フライドポテトを親指と中指で挟み、お皿に叩きつけています。

「・・パンが欲しけりゃな、自分から取りに行かなきゃならんのだよ!」

ルートビアのアルコールが回ったのかなんだか説教臭くなっています。

ルートビアにアルコールは入っていません。

山登りに行ったはずが、1日の終わりにはどちらかというと「不健康」に天秤が偏った状態で

みんなそのあと、家に帰りました。

おわり。

オチはないよ!