サンクスギビングなので、友人数名と、近所に住む知人のご家族を訪問することになりました。
玄関のベルを鳴らすと、ドアの横のブラインドから何かが覗いているのに気づきます。
おやおや、小さい子だ。
すぐにドアが開き
I saw you from inside!
「あなたたちのこと、家の中から見えたんだからね!」
と女の子はじまんしてきます。
なぬ、と私は鼻をふくらまします。初対面でなんちゅう態度だ。ここは大人としてしっかり注意します「ふっ、こっちだって君のこと、外から見えたんだからねい」
今度は奥から少年が出てきて、きみの名前は名前は名前はなんだ!と私と友人、交互に指差し、聞いてきました。何を考えているのでしょう。「貴様が先に名乗るんだな、ふん」と私はやさしく伝え、家の中へ。
他の友人が食卓の席についています。料理はまだできていない様子。とちょうどよく少年が再びひょっこり現れ、「リビングみてよ!」と言ってきます。
そこから何がどうなったのかは覚えていませんが、どうやら親しくなってしまったようです。ソファに座ると膝に乗ってきたので、左右に軽く揺らすと、けらけら笑います。大人たちが食卓でなにやら大人たちの会話をしている間、私と、女の子と男の子はカーペットでごろごろ。もう一回!もう一回!兄、妹交互にプロレス技をかけ、息切れします。
汗だくになったころ、食卓に七面鳥、コーン、チョコ。色とりどり並びはじめます。食べ物はおいしそうですが、知らない人が集まると醸し出される特有の気まずさが部屋に漂っています。
するとお母さんが、ほら、「コオロギゲーム」をしてみようよと少年に促しました。兄はそうだね!と嬉しそうに立ち上がり、小さい紙切れがたくさんはいったコップを取り出します。
コオロギゲームとは、コオロギが外で鳴くのが聞こえるくらい気まずく静かな食卓・・・にならないよう様々なお題に対して、メモを回し、質問に答えるといった簡単な遊び、とのこと。ひとりひとりの回答を見比べながら会話が盛り上がったところ
突然、妹が声を張り上げました。
静かにしてよ!と。
まじめな顔をした女の子を、みんなが心配そうに見つめます。
「コオロギ、聞こえないじゃん!」と。
あははと私たちは笑います。
お母さんが「コオロギはただのゲームの名前で、本当に聞こえるわけじゃないんだよ」と説明します。むしろ、コオロギが聞こえないように、気まずくならないように、おこなうゲーム。
すると、彼女は泣き始めました。まさに、サンタはいないんだよ現象です。
これはいけない、と私はとっさにコオロギのモノマネをげこーげこーげこーと即座にしてみましたが、うろ覚えだったためか、女の子はさらに泣く一方。別の人がiPhoneで本物のコオロギの音源をながしたら、ようやく泣き止みました。なんだい、私の鳴き真似は似ていなかったのかい、と私はひそかに傷つきます。
その後も、テーブルの下に潜ったり、ボールペンでリンボをしたり、7歳の兄の筋肉自慢に付き合ったり。そろそろ去るかと人々が食卓から立ち上がり始めたころ、兄はリビングの真ん中にあるもみの木をみあげていました。
「お母さん、クリスマスの飾りつけ、今日やってもいい?」
と彼は振り向き聞きます。
いいよと母の頷きを確認した瞬間、
This is the best day ever!
「今日は人生で最高の一日だ!」と喜びます。
妹はソファでだんまりしています。
じゃあね。ハグしていい?
いやだ!
無視して、ハグします。
目が綺麗だ。
大人になると、
物事がよく見えるようになると思っていたけど。
見えなくなっていっているのかな。
どうやら気づかないうちに、うっかり大人になっていたみたいです。
おわり